小さなことでも手を抜かず、誠実に要望を聞き、応えつづけるお話。
むかしむかし、堂本食品に直(すなお)という営業マンがいた。
直はたいそう謙虚な性格で営業成績のよい先輩に営業のコツを聞いては、「人の話をよく聞きなさい」と言われ、いつもその教えを忠実に守っていた。
あるとき、直のもとに、大きな食堂を営んでいる娘さんから、新メニューの相談に乗ってほしいと声をかけられた。
しかし、任せてもらえたのは定食のご飯に添えるたった一口の佃煮のみ。
それでも直は先輩の教えのとおり、娘さんの話を一生懸命に聞き、新しい定食にぴったりの佃煮を提案した。
食堂のイラスト
それからも直は、たびたび娘さんから呼ばれてはよく話を聞き、やがて、メインのおかずに添えるお惣菜を任せてもらえるようになった。
あくる日、娘さんからすっかり信頼された直は、ついに「メインのおかずを提案してほしい」と依頼された。
そして直が提案したメインのおかずは、食堂のお客さまに喜ばれ、娘さんからもたいそう褒められたそうな。
直のうわさは、ほかの食堂や食品問屋にも広がり、いつも依頼が絶えない人気の営業マンになったとさ。
めでたし、めでたし。